
自社株買いの発表は、結局のところ運しだい……
「持っている株がたまたま当たればラッキー」
そんなふうに思っていませんか?
たしかに、自社株買いがいつ発表されるかを、1分1秒まで正確に当てることはできません。
でも、自社株買いは「祈るだけ」が手法ではありません。
実は、企業の自社株買いには、いくつかの「予兆(サイン)」があります。
その中でも本記事では、DOE(自己資本配当率)という指標に注目し、
次に株主還元を強化しそうな企業の見つけ方を解説します。
この記事を読めば、ニュースを見てから慌てて飛びつくのではなく、
根拠を持って「次はこの銘柄が来るかもしれない」と考えながら、
先回りして待ち構える投資ができるようになります。
第1章|DOE(自己資本配当率)とは?
「配当金といえば、利益の◯%を出すもの」
そう思っている方にこそ知ってほしいのが、DOE(自己資本配当率)です。
多くの企業では、「配当性向」という
その年の利益に基づいたルールで配当額を決めています。
一方、DOEはまったく異なる視点から配当を考えます。
- ✅配当性向:
その年の「利益(お給料)」から配当を出す
→ 利益が減れば、配当も減りやすい - ✅DOE:
企業が積み上げてきた「純資産(貯金)」を基準に配当を出す
DOEの最大の特徴は「安定感」
お給料(利益)は、景気や業績によって大きく変動します。
しかし、貯金(純資産)は一気に減るものではありません。
そのため、DOEを採用している企業は
「一時的に業績が悪化しても、配当を維持しやすい」
つまり、減配しにくいという特徴を持っています。
そしてこの「安定した配当方針」こそが、
のちに自社株買いという選択肢につながっていくケースも少なくありません。
第2章|なぜDOEを見ると「自社株買い」が予見できるのか
ここからが本題です。
なぜ、この安定した配当ルールであるDOEが、
「自社株買いの予兆」になり得るのでしょうか。
そこには、企業が抱える
「増えすぎる貯金(純資産)へのジレンマ」が隠されています。
1. 貯金が増えると、配当負担が「自動的」に重くなる
DOEを採用している企業が、毎年安定して利益を出し続けると、
会社の貯金である純資産は、自然と積み上がっていきます。
するとDOEの計算式上、
支払うべき配当金の総額も、自動的に増えていくことになります。
2. 「配当総額」を抑えたい企業の心理
配当が増え続けるのは、株主にとっては喜ばしいことです。
しかし企業側から見ると、
キャッシュ流出が膨らみ続けるという悩みでもあります。
とはいえ、
DOEの目標%を引き下げる
= 実質的な減配
は、株主の手前、簡単には選べません。
3. 自社株買いという「ダイエット」
そこで企業が選択肢として検討するのが、自社株買いです。
市場から自社株を買い戻し、消却することで、
会計上の「貯金(純資産)」を減らすことができます。
💡ここがポイント
DOEのルールを守ったまま、配当支払額の急増を抑えることが可能です。
つまり、
貯金が増えすぎて、DOEの負担が重くなり始めた企業
こそが、
次に自社株買いを検討しやすい銘柄(=予兆が出ている企業)
だと考えられます。
※もちろん、すべてのDOE企業が必ず自社株買いを行うわけではありません。
ただし、「起きやすい条件」が揃っているのは確かです。
第3章|DOEを採用している銘柄は少ない?どうやって探す?
DOE(自己資本配当率)を導入する上場企業は、近年着実に増えています。
決算資料やIR方針を見ても、2019年頃と比べて明らかに採用企業は増加傾向にあります。
日本の上場企業は約4,000社ありますが、
その中でDOEを明確に掲げている企業は、まだ一部に限られます。
ただし、TOPIX採用銘柄などの中大型株を中心に、導入が広がっているのが特徴です。
「DOEが便利なのはわかったけど、どうやって見つければいいの?」
「4,000社近い企業を1社ずつ調べるなんて無理……」
そう感じるのは当然です。
でも、安心してください。探し方にはコツがあります。
実は近年、東証が企業に求めている
「資本効率の改善(PBR1倍割れ問題)」を背景に、
株主還元を明確に示す指標としてDOEを採用する企業が増えているのです。
ここからは、初心者でも迷わず進める
DOE銘柄を探すための3ステップを紹介します。
ステップ① IR資料で「DOE」という言葉を探す
もっとも確実なのは、
企業のIRページに掲載されている
中期経営計画や決算短信をチェックする方法です。
PDF資料内で
「DOE」
と検索してみましょう。
特に、次のような文言がある企業は注目です。
- ✅「株主還元方針としてDOE◯%を目安とする」
- ✅「配当性向に加え、DOEを導入し安定配当を目指す」
こうした表現がある企業は、
株主還元をルールとして重視している可能性が高くなります。
ステップ② スクリーニングサイトを活用する
1社ずつIRを確認するのが大変な場合は、
証券会社のツールや株探(カブタン)などを活用しましょう。
検索窓に
「DOE」
と入力するだけでも、関連銘柄を絞り込めます。
最近では
「DOE採用銘柄一覧」
といった特集を組んでいるサイトもあるため、
そこから候補をリストアップするのが最短ルートです。
ステップ③ 「純資産が積み上がっているか」を確認する
DOEを採用している企業を見つけたら、最後の仕上げです。
注目したいのは、
利益は出ているのに、
最近は自社株買いをしていない企業
こうした企業は、
純資産(貯金)がじわじわと積み上がっている可能性があります。
💡ワンポイント
DOEを導入した直後の企業は、
まだ配当方針の定着を優先しており、
すぐに自社株買いまで手が回らないケースもあります。
狙い目は、
DOE導入から1〜2年が経過し、
純資産が増えてきている企業。
「そろそろダイエット(自社株買い)が必要かもしれない」
そんなタイミングを、先回りして観察するのがポイントです。
第4章|DOE銘柄の傾向と、投資家が手にする2つのメリット
「DOEって、どんな会社が使っているの?」
そんな疑問を持つ方のために、
ここではDOEを導入している企業の傾向と、
投資家が得られるメリットを整理してみましょう。
1. DOEを採用している企業の傾向
DOEは、
キャッシュが比較的安定しており、
株主に対して長期的な還元姿勢を示したい企業
に採用されやすい傾向があります。
代表的な例としては、次のような業種です。
✅製造業・エネルギー関連
景気変動の影響を受けやすい業種ほど、
「業績が悪くても減配しにくい」という安心感を示すために、
DOEを採用するケースがあります。)
✅金融・商社株
安定した収益基盤を背景に、
配当のブレを抑える目的で導入されるケースが見られます。
(あくまで一例として)
- スズキ(7269)
配当の安定性を意識した株主還元方針の一環として、DOEを採用しています。 - フェローテックホールディングス(6890)
DOEを意識した還元方針を掲げ、結果として配当水準が高まってきた事例の一つです。 - クロスプラス(3320)
累進配当とDOEを組み合わせ、強い株主還元姿勢を示しています。
※DOEの導入状況や水準は、各社の経営方針によって変化します。
必ず最新の決算短信や中期経営計画で確認してください。
2. 投資家がDOE銘柄を選ぶ「2つのメリット」
では、なぜ今、DOE銘柄が注目されているのでしょうか。
投資家目線での主なメリットは、次の2点です。
① 安定配当(累進配当)への期待
DOEは、
利益が一時的に落ち込んでも、
純資産(貯金)が大きく減らない限り、
配当を維持しやすい仕組みです。
そのため、
減配リスクをできるだけ抑えたい投資家にとって、
大きな安心材料になります。
② 企業からの「誠実な約束」が見える
DOEを掲げる企業は、
「利益が出た年だけ配当を出す」のではなく、
長期的・継続的な株主還元を重視している
と解釈できます。
この姿勢は、
中長期で株を保有する投資家にとって、
心理的な安心感につながります。
第5章|【実例】DOE導入と自社株買いがセットでやってきた銘柄たち
「DOEを導入すると、本当に自社株買いが発表されるの?」
そんな疑問に答えるために、比較的最近の実例を見てみましょう。
ここで紹介する企業はいずれも、
DOEを株主還元の指標として掲げると同時に、
自社株買いという形で還元姿勢を強化した事例です。
※あくまで過去の事例であり、
今後の株価や還元を保証するものではありません。
① ニッコンホールディングス(9072)
2025年4月発表
DOE4%以上を目安とする方針を示すとともに、
4年間で約400億円規模の自社株買いを発表しました。
安定配当という「守り」のルールに加え、
自社株買いという「攻め」を同時に打ち出した点が特徴的です。
② コカ・コーラ ボトラーズジャパンHD(2579)
2024年11月発表
配当方針を見直し、DOEを新たに導入。
それと同時に、自社株買いの実施を発表しました。
大手企業がDOEを導入する際、
株主還元方針そのものを見直す流れの中で
自社株買いが組み合わされるケースがあることを示す一例です。
③ サンワテクノス(8137)
2024年10月発表
2025年3月期からDOEを導入する方針を示し、
「安定配当+自社株買い」を組み合わせた
株主還元スタンスを打ち出しました。
中堅規模の企業でも、
DOEを軸に還元姿勢を明確化する動きが
広がっていることがうかがえます。
④ 小林洋行(8742)
2025年9月発表
「DOE(株主資本配当率)の考え方に基づき」と明記したうえで、
自社株買いの実施を発表しました。
金額の大小にかかわらず、
DOEというルールが自社株買いの根拠(大義名分)として
機能していることが分かる事例です。
ただし、自社株買いが発表されたからといって、
株価が必ず上がるわけではありません。
初心者がハマりやすい落とし穴については、こちらで詳しく解説しています。
👉自社株買い=株価は必ず上がる?初心者が勘違いしやすい3つの落とし穴【実例付き】 (2026年2月2日公開)
まとめ|自社株買いは「予兆」を掴んで先回りする
自社株買いは、決して予測不可能なラッキーパンチではありません。
今回解説してきたように、「DOE(自己資本配当率)」という指標に注目することで、
企業が自社株買いを検討しやすくなる状況を、ロジカルに考えることができます。
最後に、この記事のポイントをおさらいしましょう。
- DOEは「安定配当」の約束
利益ではなく「貯金(純資産)」を基準に配当を決めるため、
減配リスクを抑えやすい仕組みです。 - 「増えすぎる貯金」が自社株買いを呼ぶ
純資産が積み上がるほど配当負担が重くなり、
企業はバランスを取る手段として
「自社株買い」という選択肢を検討しやすくなります。 - DOE導入は「還元強化」のサイン
ニッコンHDやコカ・コーラなどの実例が示すように、
DOEの採用は、株主還元の考え方が一段進んだことを示す場合があります。
「ニュースを見てから」を卒業しよう
自社株買いの発表を見て、
慌てて夜間PTSで飛びつく——。
そんなドキドキする投資も一つの形ですが、
これからは「DOE」という視点を持って、
余裕をもって発表を待ち構えるスタイルに挑戦してみませんか。
まずは、気になっている銘柄や
高配当株ランキングに載っている企業の
「株主還元方針」をチェックしてみてください。
そこに「DOE」という3文字が書かれているかどうか。
そのひと手間が、
あなたの投資を「運」から「戦略」へと近づけてくれるはずです。
DOEは
「還元姿勢」を測る指標ですが、
企業が実際に動くかどうかは、
市場や東証からの評価プレッシャー によって
決まる面も大きいのが現実です。
その代表例が、PBR1倍割れという状態です。
👉自社株買いの確率が上がる?「PBR1倍割れ」が投資のチャンスと言われる理由を徹底解説!(2026年2月2日公開)




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