米国が債務不履行（デフォルト）に陥る可能性が高まっています。
イエレン財務長官は、議会が連邦政府の借入限度額である「債務上限」を速やかに引き上げなければ、6月1日にも財政資金が枯渇し、一部支払いを履行できなくなる恐れがあると警告しています。
もしデフォルトが起きれば、米国債の価値や信用が失われ、世界経済に深刻な影響を及ぼすことになります。この記事では、米国の債務上限問題とは何か、デフォルトが起きた場合の経済的・政治的な影響、デフォルトを回避するための議会と大統領の対応について解説します。
米国が6月1日にも財政資金が枯渇するという警告
米国は、連邦政府の借入限度額である「債務上限」に直面しています。債務上限とは、法律で定められた国債発行残高の上限で、現在は31兆4000億ドル（約4320兆円）です。この上限に達すると、新たな借り入れができなくなり、政府の支出を賄うことができなくなります。これを回避するためには、議会が債務上限の引き上げや一時停止を決める必要があるのです。
しかし、議会は債務上限問題をめぐって対立しており、解決の見通しは立っていません。そのため、イエレン財務長官は、議会が早急に対応しなければ、6月1日にも財政資金が枯渇し、一部支払いを履行できなくなる恐れがあると警告しています 。財務省は、デフォルト（債務不履行）を回避するための特別措置を講じていますが、その効果も限られています。時間とともにデフォルトの危機は高まっています。
デフォルトが起きた場合の経済的・政治的な影響
もし米国がデフォルトに陥った場合、経済的・政治的な影響は甚大です。米国債は国際的な基軸通貨であり、多くの国や機関が保有しています。もし米国が債務の支払いを滞納したり、信用格付けを引き下げられたりした場合、米国債の価値が下落し、金利が上昇することが予想されます。これは、世界的な金融不安や経済危機を引き起こす恐れがあります。
また、米政府は、公務員や軍人の給与、社会保障給付、防衛関連の契約業者への支払いといった責務を果たすことができなくなります。これは、国内の消費や投資に悪影響を及ぼすだけでなく、国際社会における米国のリーダーシップや信頼性にも疑問が生じることになります。デフォルトは、米国の経済と安全保障にとって重大なリスクです。
デフォルトを回避するための議会と大統領の対応
デフォルトを回避するためには、議会が債務上限の引き上げや一時停止を可決する必要があります。しかし、現在の議会は、下院が共和党、上院が民主党というねじれ状態にあり、債務上限問題をめぐって対立しています。共和党は、バイデン政権の大規模な政府支出を批判し、歳出削減を求めています。一方、民主党は、バイデン政権の政策を支持し、債務上限の引き上げや停止を求めています。
バイデン大統領は、この問題を解決するために、2月1日にマッカーシー下院議長（共和党）とホワイトハウスで会談しました。具体的な進展はなかったものの、両者は協議の継続に合意しました。また、バイデン大統領は、5月9日に上下両院の与野党トップ全員と会談するよう求めています。バイデン大統領は、妥協案として、債務上限を9月末までに小幅に引き上げることや、政府が1兆ドルの高額コインを発行して資金調達することなどを提案しています。
デフォルト危機はどうなるのか？
米国がデフォルトに陥る可能性は低いというのが、多くのエコノミストやアナリストの見方です。彼らは、議会が最終的に債務上限問題を解決すると予想しています。また、もしデフォルトが起きても、短期的で一時的なものにとどまり、早期に回復すると考えています。
しかし、それでもデフォルトは米国と世界経済に深刻な影響を与える可能性があります。金融市場は混乱し、信用格付けは下がり、金利は上昇し、経済成長は減速するかもしれません。また、米国の信頼性やリーダーシップも損なわれる恐れがあります。
したがって、デフォルト危機を回避するためには、議会と大統領が協力して債務上限問題を解決することが必要です。債務上限の引き上げや停止だけでなく、財政赤字の削減や歳入の増加など、長期的な財政健全化に向けた取り組みも必要です。米国の財政問題は、単なる政治的な対立ではなく、国益や世界秩序に関わる重要な課題なのです。
まとめ
米国の債務上限問題は、短期的な市場の動きに大きな影響を与える可能性があります。
報道でデフォルトの危機が高まれば、株式市場は下落し、逆にデフォルトの危機が後退すれば、株式市場は上昇するなど、チャートを無視した乱高下にスイングトレーダーにとっては、慎重なリスク管理や損切りの設定が重要になるでしょう。
コメント