
日本の金利が大きく動くなか、個人向け国債や社債に注目する個人投資家が増えています。
調べていくうちに、多くの人がこんな印象を持つのではないでしょうか。
「国債は安全。でも社債はリスクが高くて怖い」と。
株式投資に慣れている人であれば、社債を過度に危険と感じることは少ないかもしれません。
しかし、個人向け国債と比較しながら検討している人にとって、社債はどうしても「リスクの塊」に見えてしまいます。
その正体はシンプルです。
国が発行する国債と違い、社債は民間企業の信用力に依存する。
たとえ超優良企業であっても、理論上は倒産リスクがゼロではありません。
実際、過去には日本航空(JAL)のような有名企業が経営破綻した例もあります。
一方で、ネットでは「危ない」「リスクが高い」と叩かれがちな楽天やソフトバンクの社債が、募集のたびに数千億円規模で即日完売を繰り返してきたのも事実です。
なぜ、そこまで多くの投資家が社債を買うのか。
2026年現在、新発社債が待たれるなかで、私たちは「リスク」と「リターン」をどう見極めるべきなのでしょうか。
本記事では、社債は過度に恐れるものではないという点を、国債との比較を通じて丁寧に解説していきます。
社債はどうして「リスクが高い」と言われるのか?
実は、機関投資家(プロ)向けの説明では、社債のリスクはそれほど強調されません。
一方で、個人投資家向けに販売される社債では、「リスク」という言葉が前面に出てきます。
その理由は、社債を検討する個人投資家の多くが、株式ではなく銀行預金や個人向け国債の代替として考えているためです。
いわば「できるだけ安全な運用先」を探している層が多く、消費者保護の観点から、販売時のリスク説明が厳格になっているという背景があります。
では、なぜ社債はここまで「危険そう」に見えてしまうのでしょうか。
1. 「倒産=ゼロ」のインパクトが強すぎるから
社債の最大のリスクは「信用リスク(デフォルトリスク)」です。
- ✅事実: もし発行企業が倒産した場合、投資した元本は保証されず、全額戻ってこない可能性があります。
- ✅国債との差: 日本国が破綻する可能性に比べ、一企業が経営破綻する可能性は統計的に見て明らかに高いため、「国債より高リスク」というレッテルが貼られます。
この「ゼロになる可能性がある」という一点だけが強調されることで、社債は必要以上に怖い金融商品として認識されがちなのです。
2. 「元本割れ」するタイミングがあるから
「社債は満期まで持てば元本が戻る」と言われることがあります。
これは基本的に正しいのですが、途中で売却する場合は話が変わります。
- ✅価格変動リスク: 世の中の金利が上がると、相対的に利回りの低い既存の社債は価格が下がり、売却時に元本を下回ることがあります。
- ✅流動性の低さ: 個人向け国債は1年経てば国が額面で買い取ってくれますが、社債は市場で買い手を見つけなければなりません。マイナーな企業の社債だと、売りたくても「適正価格で売れない」リスク(流動性リスク)が発生します。
つまり社債は、満期まで保有する前提で考える商品です。
途中売却を前提にすると、国債よりも不安定に見えてしまうのは自然なことだと言えるでしょう。
3. 「劣後債」という仕組みが誤解を生んでいる
社債の中でも、とくにリスクのイメージを強めているのが「劣後債」です。
楽天やソフトバンクがよく発行することで知られています。
- ✅劣後特約: 劣後債には「劣後特約」が付いており、倒産した際に、普通社債よりもお金が返ってくる優先順位が低く設定されています。その分、利回りは高く設定されていますが、「万が一のときは後回し」という条件だけが強調されると、一般の投資家には極端に危険な商品に映ります。
本来は、リスクとリターンを調整した設計の商品であっても、
個人投資家の目線では「後回し=危ない」という印象だけが残りやすいのです。
高リスクと言われる楽天・ソフトバンク債が「即日完売」する謎
ネットやメディアでは、「負債が多い」「倒産リスクが高い」といった言葉で語られがちな
楽天グループや
ソフトバンクグループ(SBG)
ところが、いざ個人向け社債が発行されると、証券会社の販売画面には、あっという間に
「完売御礼」の文字が並びます。
この現象は、決して偶然ではありません。
そこには、投資家が納得して購入する明確な3つの理由があります。
1. 銀行預金とは次元の違う「圧倒的な利回り」
最大の理由は、他の安全資産と比べたときの利回りの差です。
たとえば、2025年12月に発行された
ソフトバンクグループ第67回無担保社債
(いわゆる「福岡ソフトバンクホークスボンド」)の利率は年3%台後半でした。
当時の大手銀行の定期預金金利が年0.1%〜0.3%程度だったことを考えると、
利回りの差は10倍以上に達します。
100万円を預けて数千円しか利息がつかない預金と、
同じ100万円で年間数万円(税引前)の利息が得られる社債。
この差は、数字以上に強烈なインパクトを持ちます。
2. 「デフォルトリスク(倒産)」を冷静に見積もる投資家心理
世間では「高リスク」と騒がれていても、
実際に購入する投資家は感情ではなく、倒産確率と利回りを天秤にかけています。
楽天グループもソフトバンクグループも、日本の通信・ECといった
社会インフラを支える巨大企業です。
投資家は、
「これほどの規模と影響力を持つ企業が、数年以内に完全にデフォルトする確率はどれほどか」
を考えたうえで、
👉 その確率に対して、年3%〜4%の利回りは見合っている
と判断しています。
これは「倒産しないと信じている」のではなく、
確率と報酬のバランスを取った投資判断だと言えるでしょう。
3. スマホでポチれる「手軽さ」と「希少性」
もう一つ大きいのが、購入環境の変化です。
近年は、ネット証券の普及により、
現役世代の個人投資家がスマホから数タップで社債を購入できるようになりました。
実際、2025年12月のSBG債では、
募集開始から数日以内に完売する証券会社が相次ぎました。
社債は、株式のように常時売買できる商品ではありません。
「次はいつ出るかわからない」「今を逃すと買えない」という希少性が、
投資家の「今のうちに確保しておきたい」という心理を刺激します。
この手軽さ × 希少性が重なった結果、
「即日完売」という現象が繰り返されているのです。
実は「社債を発行できる」という信用力はハンパない!
ネット掲示板やSNSでは、
「赤字だ」「負債が多い」「危ない会社だ」
と企業が叩かれる光景をよく目にします。
しかし、その企業が公募の社債を発行できているのであれば、
プロの世界ではすでに一定以上の信頼を勝ち取っていると見るのが現実です。
なぜなら、社債の発行は「上場している」というだけでは到底クリアできない、
いくつもの高いハードルを超えた企業にしか許されないからです。
1. 証券会社による「鬼の引受審査」
上場企業であっても、どこでも自由に社債を発行できるわけではありません。
社債を出すには、主幹事となる証券会社による厳しい引受審査を通過する必要があります。
審査では、
- ✅財務状況
- ✅事業モデルの持続性
- ✅経営陣やガバナンス体制
- ✅反社会的勢力との関係の有無
など、数百項目に及ぶチェックが行われます。
ここで重要なのは、証券会社自身が大きな責任を負っている点です。
もし審査が甘く、社債発行後すぐに経営破綻でも起これば、
証券会社は信頼を失い、場合によっては法的責任を問われかねません。
つまり、私たちが購入できる個人向け社債とは、
証券会社が自社の看板をかけて「この企業なら引き受けられる」と判断したものだけなのです。
2. 数千億円を集められる「財務の透明性」
社債で数百億円、数千億円という資金を市場から集めるためには、
法律に基づいた極めて高い情報開示レベルが求められます。
社債発行企業には、有価証券報告書を通じて、
詳細な財務状況やリスク情報を継続的に開示する義務があります。
さらに近年では、
銀行との約束事である財務制限条項(コベナンツ)なども含め、
企業の内部事情がかなり踏み込んだレベルで開示されるようになっています。
隠し事ができないほど「丸裸」にされているからこそ、
投資家は安心して巨額の資金を投じることができるのです。
3. 「倒産リスク」に対する現実的な確率
「リスクが高い」と言われがちな
楽天グループや
ソフトバンクグループも、
2026年時点で日本格付研究所(JCR)などの格付機関から
「A」や「A-」といった投資適格(いわゆる安全圏)の評価を維持しています。
格付けは単なるイメージではありません。
過去の統計データに基づき、「その格付けの企業がどれくらいの確率で破綻してきたか」を反映した指標です。
一般に、「A」クラスの企業が短期間でデフォルト(債務不履行)に陥る確率は極めて低いとされています。
つまり、私たちの目に触れる「公募社債」を発行できている時点で、
その企業は日本国内に存在する数百万社の中でも、上位ごく一部の信用力を持つ企業だという事実は揺るぎません。
楽天債は「特典付き」で大熱狂!購入のメリット
楽天グループが発行する個人向け社債、いわゆる「楽天債」は、
高い利回りに加えて、他社にはないユニークな購入者特典が付くことで、個人投資家から大きな支持を集めています。
実際、2025年に発行された第25回楽天債では、
「楽天モバイルが1年間無料」という特典が話題となり大きな注目を集めました。
豪華な「購入者特典」がつく理由
楽天債の最大の特徴は、
楽天グループのエコシステム(経済圏)を活かした特典が付く点です。
代表的なものには、次のような特典があります。
- 楽天ポイント還元
購入金額に応じて楽天ポイントが付与されるキャンペーンが実施されることがあります。
普段から楽天市場や楽天カードを使っている人にとっては、実質利回りの上乗せになります。 - 楽天モバイル無料特典
楽天モバイルの音声+データプランが
1年間、場合によってはそれ以上無料で使えるeSIMが提供されるケースもあります。
これらの特典は、単なる「おまけ」ではありません。
通信費や日常のポイント還元を考慮すると、金利以上の価値を感じる投資家も少なくありません。
楽天債を買うなら、購入環境も重要
楽天債を購入する場合、
楽天証券を利用する投資家が多いのも事実です。
- 楽天ポイントとの親和性
- 募集開始時の情報が分かりやすい
- スマホアプリからスムーズに申し込みできる
といった点が、個人投資家に支持されています。
【どっちが買い?】個人向け国債と社債の比較
個人向け国債と社債。
「どちらが人気か?」と聞かれれば、答えは少しややこしい。
- 購入者の“数”が多いのは個人向け国債
- “争奪戦の熱狂度”が高いのは社債
つまり、性質の異なる人気が存在します。
2026年時点は金利上昇局面にあり、
個人向け国債(とくに変動10年)の魅力は確実に増しています。
一方で、社債の金利も今後さらに上がっていく可能性が高い状況です。
その理由はシンプルで、
社債の金利は「国債金利 + 上乗せ金利(スプレッド)」で決まるのが一般的だからです。
国債の利回りが上がれば、
社債の利回りもそれに引きずられる形で上昇していきます。
この構造がある以上、金利面だけを見れば社債が有利になりやすいのは事実です。
金利比較(2026年2月時点・直近募集ベース)
| 銘柄 | 最新の利率(年率・税引前) | 特徴 |
|---|---|---|
| 個人向け国債(変動10年) | 1.48% | 国が保証。半年ごとに金利が見直され、金利上昇局面に強い |
| 楽天カードマン債(2025年6月) | 1.68% | 国債との差が小さく、リスクに見合うかは判断が分かれる |
| ソフトバンクグループ債(2025年11月) | 3.98% | 国債の約2.7倍。高リターンを狙う層に依然として人気 |
※ 楽天カードマン債=楽天グループ関連社債
※ ソフトバンクグループ債=ソフトバンクグループ社債
結局、どちらを選ぶべきか?
2026年の投資戦略として、以下の基準で判断するのが合理的です。
- 「1円も減らしたくない」なら:個人向け国債 1.48%という金利は、かつての超低金利時代を知る人からすれば十分に高い水準です。「リスクは取りたくないが、預金よりは増やしたい」という方の正解は、間違いなくこちらです。
- 「リスクを承知で資産を増やしたい」なら:社債(特に利回り3%以上) ソフトバンク債のように、国債の2倍以上の金利が提示されているなら、社債を選ぶ合理性があります。逆に、国債との差(スプレッド)が極端に小さい銘柄であれば、無理に社債へ突っ込む必要はないと言えます。
社債を購入するのは本当に危険なのか?
冒頭でも触れましたが、社債を国債と比較すれば、確かに企業固有の倒産リスクは存在します。
ただし、これを株式投資と比較すると、社債のリスク構造はまったく異なります。
社債のリスクは、極端に言えば
「デフォルト(倒産)するか、しないか」
という一点に集約されるからです。
1. 「株価10分の1」でも、社債なら無傷
株式と社債の決定的な違いは、
「資産価値が何に左右されるか」です。
- 株式: もし株価が10,000円から1,000円に大暴落すれば、株主はまさに顔面蒼白、資産の9割を失うことになります。
- 社債: 同じ企業の株価がどれだけ暴落しても、会社が倒産しない限り、社債の価値は揺らぎません。約束された利息は支払われ続け、満期になれば元本は100%(額面通り)戻ってきます。
2. リスクの焦点は「倒産」の一点のみ
株式投資では、倒産しなくても「不祥事」や「業績悪化」だけで大損する可能性があります。対して、社債投資家が負ける条件はたった一つ、「会社が潰れてお金を返せなくなること(デフォルト)」だけです。
- 優先順位の差: 万が一、企業が倒産した場合でも、法律上の返済順位は「株主」よりも「社債権者(お金を貸している人)」が優先されます。
結論: 株式は「どこまで下がるか分からない」という不安がつきまといますが、社債は「倒産さえしなければ、最初から結果が決まっている」投資です。この仕組みの違いを知れば、むやみに「危険だ」と恐れる必要がないことがわかります。
まとめ:数字で見る「倒産リスク」の真実
「社債は怖い」という感情を取り払い、客観的なデータでリスクを整理してみましょう。
1. 過去10年、個人向け社債のデフォルトはほぼゼロ
実は、日本の個人向け社債(リテール債)市場において、
過去10年(2016〜2025年頃)に一般投資家が購入できた大企業の社債で、デフォルトと正式に認定された事例は確認されていません。
よく引き合いに出されるのが、2010年に会社更生法を申請した
**日本航空(JAL)**のケースです。
ただしこれは
- リーマンショック直撃
- 旧経営体制の構造問題
- 国策判断が絡む再建
という極めて特殊な事例でした。
それ以降、私たちが普段目にするような
大手企業の個人向け社債は、すべて約束通りに償還されています。
2. 格付け別に見る「倒産確率」の目安
「万が一」の確率は、格付け会社が公表する長期統計からおおよそ把握できます。
結論から言えば、投資適格(BBB以上)と投機的(BB以下)では、世界がまったく違う。
| 格付けランク | 1年以内の倒産確率(目安) | 10年間の累積倒産確率(目安) |
| AAA(最高位) | ほぼ 0.00% | ほぼ 0.00% |
| AA | 0.00% ~ 0.02% | 0.1% ~ 0.5% |
| A | 0.01% ~ 0.05% | 0.5% ~ 1.5% |
| BBB(投資適格の境界) | 0.1% 前後 | 2.0% ~ 5.0% |
| BB以下(投機的) | 1.0% 以上 | 10.0% 以上 |
※数値は格付け会社・集計期間により差がありますが、
「BBB以上が投資の最低ライン」という考え方は世界共通です。
3. 楽天・ソフトバンクの現在の「立ち位置」
注目される2社の格付けは以下の通りです(2026年時点)。
- 楽天グループ:
- R&I:BBB+(安定的) / JCR:A-(安定的)
- 日本国内の基準では「投資適格」を維持しており、10年以内の倒産確率は統計上数パーセント程度に抑えられています。
- ソフトバンクグループ:
- 国内(R&I・JCR):投資適格(BBB〜A-)
- 海外(S&P・Moody’s):投機的(BB+ / Ba1)
- 国内外で評価が分かれていますが、これが「国債の2.7倍」という高い利率(リスクプレミアム)の根拠となっています。
結び:リスクを正しく恐れ、リターンを掴む
社債投資は、決して「100%安全」ではありません。しかし、統計データを見れば、「ネットで叩かれているほど、無謀なギャンブルではない」ことも分かります。
- 安全を最優先し、1.48%の利回りで満足するなら「個人向け国債」
- 多少のリスク(数%の確率)を許容し、3〜4%のリターンを狙うなら「社債」
2026年、金利がある世界。
「なんとなく怖い」だけで預金に寝かせ続けることこそ、
実は一番の機会損失かもしれません。



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