
最近、SANKYO(6417)の株価が冴えません。
パチンコ・パチスロは久しく触っていませんし、
正直なところ、ここ数年は業界そのものを深く追ってきたわけでもありません。
それでも投資家として、
無借金経営で高配当を継続してきたSANKYOは、昔からどこか気になる存在でした。
そういえば最近、
「パチンコ店の閉店ラッシュ」といったニュースを、時々目にします。
世間ではすっかり、
パチスロ=衰退産業
そんなイメージが定着しているようにも感じます。
もしそのイメージ通りだとしたら──
SANKYOの株価はこのまま下がり続け、
いずれは立ち行かなくなってしまうのでしょうか。
……さすがに、それは違うはずだ。
業界全体が縮小しているとしても、
すべての企業が同じ運命をたどるとは限らない。
むしろ、こういう局面だからこそ
「勝つ会社」と「消えていく会社」が、はっきり分かれてくる。
とはいえ、
「なんとなく大丈夫そう」
「昔から好きな会社だから」
そんな感覚だけで投資判断をするわけにもいきません。
そこで本記事では、
SANKYOが公表している中期経営計画を読み解きながら、
- ✅パチスロ業界は本当に衰退産業なのか
- ✅その中でSANKYOは、どんな立ち位置を狙っているのか
を、投資家目線で整理・分析していきたいと思います。
※本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではなく、あくまで筆者個人の見解・分析に基づくものです。投資判断はご自身の責任で行ってください。
パチスロ産業は衰退しているように見えるだけ
パチンコ業界では、市場規模の縮小や人件費・電気代などのコスト増を背景に、
長年営業してきた店舗や、地域の中堅ホールの閉店・廃業が相次いでいます。
こうしたニュースが続けば、
「パチスロ産業は衰退している」
というイメージが定着してしまうのも、無理はありません。
しかし、業界全体を俯瞰して見ると、
需要そのものが消えているとは言い切れない状況が見えてきます。
確かに店舗数は減少傾向にありますが、
その一方で、1店舗あたりの設置台数が増える
いわゆる“ホールの大型化”が進んでいます。
その結果、
客は大手法人や地域一番店へと集中し、
業界全体では、
「生き残るホール」と「撤退するホール」の二極化が明確になりました。
実際、2025年から2026年にかけて、
遊技参加人口は2年連続で増加しており、
少なくとも「誰も遊ばなくなった産業」とは言えない状況です。
2026年現在のパチスロ業界は、
スマートパチスロ(スマスロ)の定着に加え、
新台販売台数において
「パチンコからパチスロへの逆転現象」が起きるなど、
構造転換の真っただ中にあります。
そして、この環境変化のなかで、
主要メーカーである SANKYO は、
進行する二極化の“勝ち組”として、
高いシェアを維持し、結果的に一人勝ちに近い状態となっています。
中期経営計画の進捗は順調
SANKYOは、
2024年5月9日に中期経営計画(2025年3月期〜2027年3月期)を公表しました。
計画の最終年度となる2027年3月期に向けて、過去最高益の更新を掲げています。
中期経営計画における主な経営数値目標
- 連結売上高:2,200億円
- 連結営業利益:880億円(過去最高益)
- 営業利益率:40.0%
- ROE(自己資本利益率):15〜20%を維持
販売シェア目標
- パチンコ:30%以上を盤石に維持
- パチスロ:15%を獲得し、トップグループ入り
いずれも、業界全体が縮小・淘汰局面にあることを考えると、
かなり強気に見える目標です。
2026年3月期 通期計画に対する進捗率(第3四半期累計)
2026年2月5日に発表された第3四半期決算によると、
2026年3月期の通期計画に対する進捗率は以下の通りです。
| 指標 | 進捗率 |
|---|---|
| 売上高 | 87.5% |
| 営業利益 | 98.0% |
| 経常利益 | 98.4% |
| 最終利益(親会社株主に帰属) | 103.2% |
中期経営計画で掲げている
2027年3月期・営業利益880億円という目標に対し、
2026年3月期の営業利益予想は約640億円と、一見すると低く見えます。
しかし、第3四半期時点での進捗率を見る限り、
- ✅会社側の通期予想はかなり保守的
- ✅利益の出方は計画を上回るペース
- ✅中期経営計画の軌道から外れている様子はない
と評価するのが自然でしょう。
むしろ、
中計後半に向けて上振れ余地を残した進捗
と見ることもできます。
現在の株価とのギャップ
中期経営計画や直近の決算を見る限り、
SANKYOの業績進捗は順調です。
それにもかかわらず、足元の株価は冴えません。
この「業績と株価のギャップ」は、
主に3つの要因から生じていると考えられます。
① 自社株買い(600億円)の終了
1つ目は、
2025年5月に発表された600億円規模の自己株式取得が、2025年12月に終了したことです。
今回の自社株買いは、
- ✅金額ベースでほぼ満額を実行
- ✅発行済株式の1割超を消却
- ✅中期経営計画の真っただ中で完遂
という、株主還元としては極めて強い内容でした。
実際、自社株買いの発表以降、
株価は順調に高値を更新していきました。
自社株買いそのものが、明確な買い支え要因だったと言えるでしょう。
しかし、その取得が終了したことで、
株価を下支えしていた需給面の追い風が一旦なくなった。
これも、現在の下落要因の一つと考えられます。
② 上方修正を出さなかったことによる不透明感
2つ目は、
上方修正を出さなかったことによる不透明感です。
2026年2月5日に発表された第3四半期決算では、
- 通期計画(営業利益640億円)に対する進捗率:98.4%
と、ほぼ通期計画を達成してしまいました。
それにもかかわらず、会社は通期予想を据え置いたままでした。
この判断は逆に、
- 第4四半期(1〜3月)は、ほとんど利益が出ない前提なのか
- なぜこのタイミングで上方修正を出さないのか
といった疑問や不透明感を市場に与えました。
市場はすでに
「さらなる上振れ」を期待して株価を織り込んでいたため、
予想据え置きという発表は
「材料出尽くし」と受け取られ、株価下落につながったと考えられます。
③ 大口株主の動向(需給要因)
3つ目は、大口株主の持ち高調整です。
2026年2月20日の大量保有報告書では、
海外機関投資家(スレッドニードル等)の持ち分減少が確認されています。
こうした海外機関投資家の売却は、
- ✅企業業績とは直接関係しない
- ✅短期的には株価に強い影響を与える
典型的な需給要因です。
業績が好調であっても、
大口の売りが重なれば株価が下落することは珍しくありません。
今回の下落局面でも、
需給面の悪化が株価を押し下げた側面は無視できないでしょう。
本決算までに見直し買いの可能性は?
2026年5月に予定されている2026年3月期 本決算発表に向けて、
SANKYOには
「見直し買い」が入る可能性は十分にあると考えています。
その理由は、大きく分けて
① 上方修正の可能性
② 新たな自社株買いへの期待
の2点です。
1. 上方修正の可能性:ほぼ確実視される理由
最大の根拠は、
2026年2月5日に発表された第3四半期(3Q)決算時点で、すでに通期目標をほぼ達成していることです。
- 経常利益の進捗率:98.4%
(通期目標640億円に対し、実績629億円) - 親会社株主に帰属する純利益の進捗率:103.2%
(通期目標440億円に対し、実績453億円)
現在、会社側は「通期予想を据え置き」としていますが、これは第4四半期(1-3月)に利益が「ゼロ」あるいは「赤字」にならない限り、最終的な着地は上方修正される計算になります
つまり、決算発表が株価の見直し材料になる余地は十分にあると考えられます。
2. 自社株買いの期待:新年度(2027年3月期)枠への期待
もう一つの重要なポイントが、
自社株買いの再開・追加実施への期待です。
中期経営計画(2025年3月期〜2027年3月期)では、
同社は
「機動的な自社株買いによる追加還元も視野に入れる」
と明確に記載しています。
- 次期(2027年3月期)の期待: 5月の本決算発表のタイミングで、新たに次年度分の自社株買い枠を設定する可能性があります。
- ROE目標の達成: 中期経営計画で「ROE 15〜20%」を目標に掲げており、これを維持するためには、利益が積み上がって自己資本が膨らむ分、自社株買い等で資本を圧縮し続ける必要があります。
「機動的な実施」を明言している以上、
本決算前後で何らかの還元策が打ち出されても不思議ではありません。
現在の調整局面は見直し対象になり得ると考えられます。
なお、
自社株買いが出やすい企業の特徴や、発表前後の投資判断については、
こちらの記事で詳しく整理しています。
まとめ
SANKYO自身は、中期経営計画(2025〜2027年)の中で、
すでに「市場規模は縮小していく」ことを前提とした戦略を明確に打ち出しています。
① シェア拡大による成長戦略
市場全体の設置台数が減少しても、
パチンコ30%、パチスロ15%という高いシェア目標を達成することで、
売上と利益を維持・拡大していく方針です。
これは「業界全体」ではなく「勝ち組に集中する」戦略と言えます。
② 圧倒的な高収益体質
2026年3月期の営業利益率は約34%と、
一般的な製造業と比較しても群を抜く水準です。
台数が多少減っても、利益が大きく崩れにくい体質をすでに確立しています。
③ 中期経営計画の進捗は極めて順調
直近の決算を見る限り、
中計で掲げた高い数値目標に対して、進捗はむしろ前倒し気味です。
少なくとも、計画から大きく外れている兆しは見られません。
これらを踏まえると、
足元の株価下落は業績悪化を織り込んだものではなく、短期的な調整局面と捉えるのが自然ではないでしょうか。
個人的には、
今の株価水準は「悲観が先行している状態」に近く、
中期経営計画と実際の業績を冷静に見れば、
過度に弱気になる局面ではないと考えています。
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「業績は好調なのに株価が下がる」という現象は、
SANKYOに限った話ではありません。
実際、
任天堂(7974)も
好材料が揃っていた局面で、
市場の“別テーマ”を理由に株価が大きく調整しました。




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