半導体は、スマートフォンやパソコンなどの電子機器に欠かせない部品です。その製造には、高度な技術を持つ装置が必要となります。
日本は、こうした半導体製造装置の分野で世界トップクラスのシェアを誇っていますが、政府は今年7月から、中国などへの輸出手続きを厳格化する措置を新たに行うと発表しました。
これは、先端半導体技術が軍事転用されるリスクを防ぐためであり、米中の覇権争いに対応し、アメリカとの連携を強化するためでもあります。
この措置は、日本の経済安全保障にとって重要な意味を持ちますが、一方で、中国への輸出が多い日本企業にも大きな影響を与える可能性があります。
では、具体的にどんな企業が影響を受けるのでしょうか。この記事では、半導体製造装置の輸出規制強化の内容と、その影響を受ける企業について紹介します。
半導体製造装置の輸出規制強化の内容
半導体製造装置の輸出規制強化の内容とは、具体的にはどのようなものでしょうか。経済産業省によると、対象となるのは洗浄や成膜、熱処理、露光、エッチング、検査などの23品目です。これらは、回路幅が14ナノメートル以下の高性能な半導体を製造するために必要な装置であり、日本企業が高い技術力を持っています。この措置は、7月23日から施行される予定です。
この措置によって、政府が輸出管理の仕組みが整っていると認めたアメリカや韓国、台湾など42の国や地域への輸出よりも、中国を含むその他の国や地域への輸出の際の手続きが厳しくなります。具体的には、毎回、経済産業大臣の許可を取ることが必要となります。これは、先端半導体技術が軍事転用されるリスクを防ぐためであり、米中の覇権争いに対応し、アメリカとの連携を強化するためでもあります。
影響を受ける企業とは
半導体製造装置の輸出規制強化によって、影響を受ける企業はどのようなものでしょうか。経済産業省によりますと、新たな措置の対象になる半導体製造装置を輸出する主要な企業は、東京エレクトロンやアドバンテストなど10社余りで、主にアメリカと中国に輸出しています。ここでは、その中から代表的な3社をピックアップして紹介します。
- 東京エレクトロン:露光装置や成膜装置などを製造。中国への輸出額は2022年度で約8200億円で、輸出全体のおよそ30%を占める最大の輸出先。輸出規制強化によって、中国向けの受注が減少する可能性がありますが、アメリカや台湾などからの需要は高まると見込まれています。
- アドバンテスト:半導体の性能や品質を測定する検査装置を製造。中国への輸出額は2022年度で約2000億円で、輸出全体のおよそ20%を占めます。輸出規制強化によって、中国向けの受注が減少する可能性がありますが、アメリカや韓国などからの需要は高まると見込まれています。
- SCREENホールディングス:洗浄装置や成膜装置などを製造。中国への輸出額は2022年度で約1500億円で、輸出全体のおよそ15%を占めます。輸出規制強化によって、中国向けの受注が減少する可能性がありますが、アメリカや台湾などからの需要は高まると見込まれています。
株価への影響は?
半導体製造装置の輸出規制強化は、影響を受ける企業の株価にも一定の影響を与えています。しかし、その影響は限定的であるという見方もあります。
- 輸出規制強化は事前に報じられていたことであり、市場に織り込まれていた。経済産業省は3月末に輸出規制強化の方針を発表しており、7月に施行されることも予想されていました。そのため、株価への影響は限定的であるという見方があります。
- 中国以外の国や地域からの需要が高まることが期待されている。半導体製造装置の輸出規制強化は、中国向けの受注が減少する可能性がありますが、アメリカや台湾などからの需要は高まると見込まれています。特に、アメリカは半導体産業の国内復活を目指しており、日本企業に対する支援策も検討しているという報道もあり、株価にポジティブな影響になる可能性があります。
まとめ
この記事では、半導体製造装置の輸出規制強化の内容と、その影響を受ける企業について紹介しました。輸出規制強化は、日本の経済安全保障にとって必要な措置であり、アメリカとの連携を強化することにもつながります。
しかし、一方で、中国との貿易関係や半導体産業にも影響を及ぼす可能性があります。中国は日本の措置に対して強く反発しており、報復措置を取る可能性もあります 。
また、半導体産業は世界的な需要が高まっており、競争が激化しています 。日本企業は、輸出規制強化に対応しながらも、技術力や市場シェアを維持・拡大するために努力する必要があります 。
今後の展開や見通しについては、引き続き注目していきたいと思います。
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