速さを取るか、ダマシを減らすか。
移動平均の“反応速度”の話

EMA・DEMA・TEMAの違いと使い分け
― MACD設定で迷わないための考え方
※この記事は、
MACDを使い始めたばかりの方、
もしくは「設定で迷い始めた方」向けに書いています。
MACDを使っていると、
こんな疑問が出てきませんか?
「EMAって何?」
「DEMAやTEMAのほうがいいの?」
調べれば調べるほど、
設定の選択肢が増えて逆に迷う──
これは多くの人が通る道です。
先に結論を言ってしまいます。
💡 EMA・DEMA・TEMAに“最強”はありません。
違うのは、相場への反応速度だけです。
- 反応が速い → 早く気づける
- 反応が速い → ダマシも増える
つまり大切なのは、
「どれが優れているか」ではなく
「自分のトレードに合っているか」。
この記事では、
EMA・DEMA・TEMAの違いと使い分けを、
MACDを実戦で使う目線で整理します。
👉 初心者の方は、まず標準のMACD(EMA)だけで十分。
その理由も、ここでしっかり説明していきます。
設定で迷わなくなるための「考え方」を、
ここで一度、整理していきましょう。
① まず押さえる前提
― 反応が速い=優秀、ではない
「反応が速い指標の落とし穴について解説しました。まずは基本となる『標準的なMACD』の仕組みをしっかり理解しておきたい方は、こちらの記事を参考にしてください。」
👉MACDの使い方・見方を完全ガイド
EMA・DEMA・TEMAを比較する前に、
必ず押さえておいてほしい前提があります。
それは、
💡 「反応が速い指標=勝てる指標」ではない
ということです。
移動平均は「速さ」と「安定性」のトレードオフ
EMA・DEMA・TEMAの違いは、
ざっくり言えば株価への反応速度です。
- EMA → 標準的(バランス型)
- DEMA → やや速い
- TEMA → かなり速い
一見すると、
「速く反応できるなら、
そのほうが有利じゃない?」
と思いがちですが、
実際の相場はそんなに単純ではありません。
反応が速いと、何が起きる?
反応が速い指標には、
メリットとデメリットが必ずセットで存在します。
メリット
- トレンドの変化に早く気づける
- エントリー・エグジットが早い
デメリット
- ノイズ(ダマシ)にも反応しやすい
- レンジ相場では無駄な売買が増えやすい
つまり、
👉 速い=シグナルが増える
👉 増える=判断ミスも増えやすい
という構造です。
「速さ」が活きる場面・殺される場面
ここが重要です。
- 値動きがはっきりしている相場
→ 速い指標が活きやすい - 横ばい・行ったり来たりの相場
→ 速い指標ほど振り回されやすい
多くの初心者がやってしまうのが、
「シグナルが多い=チャンスが多い」
と勘違いして、
DEMA・TEMAに変えた瞬間、トレードが荒れるケースです。
だから初心者は「遅いほう」が安定する
結論はシンプルです。
💡 初心者ほど、
反応が“少し遅い”指標のほうが安定します。
理由は、
- 相場の流れを落ち着いて見られる
- ダマシに振り回されにくい
- 判断基準がブレにくい
からです。
これはスキルの問題ではなく、
相場構造の問題です。
② MACDの基本「EMA」とは?(すべての基準になる考え方)
EMA(指数平滑移動平均)は、
EMA・DEMA・TEMAの中でもっとも基本となる移動平均です。
まず結論から言うと、
💡 迷ったらEMA。
これが“基準”になります。
EMAは「今」を重視しつつ、ブレにくい
EMAは、
直近の株価に少しだけ重みを置いた移動平均です。
- 単純移動平均(SMA)より反応は速い
- でも、極端に敏感すぎない
このバランスの良さが、
EMAが長年使われ続けている最大の理由です。
EMAは「相場の流れ」を見るための指標
EMAの役割は、
細かい売買タイミングを当てることではありません。
👉 相場の“流れ”を把握すること
これがEMAの本来の使い方です。
- 上向きなら、買いが優勢
- 下向きなら、売りが優勢
- 横ばいなら、無理に触らない
EMAを見ることで、
「いま、戦うべき相場なのか?」
を冷静に判断できるようになります。
標準MACDがEMAで作られている理由
多くのチャートソフトで使われている
標準MACDは、
- 短期EMA(12)
- 長期EMA(26)
- シグナルEMA(9)
という組み合わせで作られています。
これは偶然ではありません。
- 速すぎない
- 遅すぎない
- 検証データが豊富
という、実戦向きのバランスが取れているからです。
そのため、
👉 書籍
👉 解説記事
👉 検証動画
の多くも、
この標準設定を前提に話が進みます。
EMAは「ダマシを減らす」ための選択
EMAは、
DEMAやTEMAと比べると反応が遅めです。
ですが、それは欠点ではありません。
- 無駄なクロスが減る
- レンジ相場で振り回されにくい
- 判断がシンプルになる
つまり、
💡 「勝率を安定させるための遅さ」
だと言えます。
こんな人はEMAから始めるべき
次のどれかに当てはまるなら、
EMAがベストです。
- テクニカル指標にまだ慣れていない
- トレード判断に迷いやすい
- チャートを見る時間が限られている
- スイング・中期目線で取引したい
まずEMAで
「相場の流れを見る目」を作る。
それが、
DEMA・TEMAを活かす近道でもあります。
EMAを理解すれば、次が見えてくる
EMAは、
- MACDの基準
- DEMA・TEMAの土台
- トレンド判断の基本
です。
ここを飛ばして
いきなりDEMA・TEMAに進むと、
ほぼ確実に迷います。
③ MACDの反応を速めた「DEMA」とは?(EMAの遅れを削る選択肢)
DEMA(Double Exponential Moving Average:二重指数平滑移動平均)は、
EMAの弱点だった「遅れ」を減らすために作られた指標です。
ひとことで言うと、
💡 「EMAは少し遅い」と感じた人向けの改良版
それがDEMAです。
DEMAは「EMAを2回使って、遅れを削る」
DEMAは、
EMAをもう一度EMAにかけて計算されます。
細かい計算式を覚える必要はありませんが、
考え方はとてもシンプルです。
- EMA → まだ少し遅い
- EMAを重ねる → 遅れが目立つ
- その遅れを打ち消す → DEMA
つまり、
👉 EMAの滑らかさを保ちつつ、反応だけ速くした
それがDEMAの正体です。
DEMAは「トレンド初動」を捉えやすい
DEMAの一番の特徴は、
👉 トレンドの立ち上がりに早く反応すること
です。
- EMAよりクロスが早い
- 転換点に近い位置で反応する
- 初動に乗りやすい
そのため、
- 押し目買い
- 戻り売り
- トレンド転換の気配
を一歩早く察知したい場面で力を発揮します。
ただし、ダマシは増えやすい
反応が速いということは、
それだけノイズにも反応しやすいということです。
- レンジ相場ではクロスが増える
- 小さな値動きに振り回されやすい
- 判断回数が多くなる
EMAで落ち着いて見られていた人ほど、
「あれ?逆に難しくなった?」
と感じることもあります。
DEMAが向いている相場・向いていない相場
DEMAが向いているのはこんな場面です。
- トレンドがはっきりしている相場
- ボラティリティが高め
- 短期〜中期で素早く反応したいとき
逆に、
- 値動きが小さい
- レンジが長く続く
- 方向感がない
こうした相場では、
EMAのほうが安定します。
DEMAは「EMAに慣れてから」使うのが正解
いきなりDEMAから使い始めると、
- 反応が速すぎる
- 判断基準がブレる
- ルールが作りにくい
という状態に陥りがちです。
おすすめの流れは、
1️⃣ EMAで流れを見る
2️⃣ EMAが遅く感じたらDEMAを試す
3️⃣ 相場に合えば採用する
この順番です。
DEMAは「スピード重視の選択肢」
まとめると、DEMAは、
- EMAより反応が速い
- 初動を捉えやすい
- その分ダマシも増える
というスピード重視型の指標です。
「EMAはちょっと遅い」
そう感じ始めたときが、
DEMAを使うタイミングです。
④ 最速指標「TEMA」とは?(MACDを超高感度にする設定)
TEMA(Triple Exponential Moving Average:三重指数平滑移動平均)は、
EMA・DEMAよりも、さらに反応速度を高めた移動平均線です。
ひとことで言うと、
⚠️ 「とにかく遅れをなくしたい人向け」
それがTEMAです。
TEMAは「EMAを3回使った最速仕様」
TEMAは、
EMAを3回重ねて計算し、
そこから遅れを極限まで打ち消す構造になっています。
細かい計算式を覚える必要はありませんが、
- EMA → 標準
- DEMA → 速い
- TEMA → 最速
という位置づけだけ覚えておけばOKです。
TEMAの最大の特徴は「株価にほぼ張り付く」
TEMAをチャートに表示すると、
多くの人がまずこう感じます。
「え、ローソク足に近すぎない?」
その感覚は正解です。
- トレンド初動に即反応
- 反転ポイントに非常に近い
- クロスがとにかく早い
「遅れ」という概念を、ほぼ感じさせません。
その代償は「ダマシの多さ」
反応が速すぎるということは、
当然ながら欠点も大きくなります。
- レンジ相場では無数にクロス
- 小さな値動きに即反応
- 売買判断が忙しくなる
EMAやDEMAで落ち着いていた人ほど、
「これは使いこなせないかも…」
と感じやすい指標です。
TEMAが活きるのは「限定された場面」
TEMAは、
どんな相場でも使える万能指標ではありません。
向いているのは、次のような場面です。
- 強いトレンドが出ている
- 短期売買(スキャル・デイトレ)
- 明確なルールがあるトレード
逆に、
- レンジ相場
- 値動きが小さい
- 中長期でゆったり見る
こうした環境では、
ストレスが増えるだけになりがちです。
TEMAは「経験者向け」の指標
正直に言うと、
TEMAは初心者向けではありません。
- 判断が速すぎる
- ルールが曖昧だと破綻しやすい
- 感覚トレードになりやすい
そのためおすすめの順番は、
1️⃣ EMAで相場の流れを掴む
2️⃣ DEMAで反応速度を上げる
3️⃣ 必要な場面だけTEMAを使う
この位置づけが一番安全です。
TEMAは「切り札」。常用しない
TEMAは、
- 最速
- 高感度
- 高リスク
という、
ピーキーな指標です。
常に使うものではなく、
「ここは初動を絶対に逃したくない」
そんな場面で、
一時的に使う“切り札”
それがTEMAの正しい使い方です。
⑤ EMA・DEMA・TEMAの「反応速度」の違いと使い分け
ここまで読んで、
「結局、どれを使えばいいの?」
そう感じた人も多いと思います。
結論から言うと、
相場環境とトレードスタイルで使い分けるのが正解です。
まずは3つの違いを一気に整理
ここまで説明してきたEMA・DEMA・TEMAの違いを、
一目で整理すると、次の比較表になります。
| 指標 | 反応速度 | 安定感 | ダマシ | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| EMA | 普通 | 高い | 少なめ | 初心者〜中級者 |
| DEMA | 速い | 中 | やや多い | 短期寄り |
| TEMA | 最速 | 低い | 多い | 経験者 |
この表だけでも、
役割の違いはかなりハッキリします。
基本は「EMA」を軸に考える
最初に使うなら、
迷わずEMAです。
- トレンドが見やすい
- 無駄な売買が減る
- 長く使える
EMAは、
相場の「地図」のような存在。
まずはここで、
今、上昇なのか?下降なのか?
を判断するのが王道です。
もう一段、反応を速めたいなら「DEMA」
EMAだと、
「ちょっと遅いな…」
と感じ始めたら、
DEMAが次の選択肢になります。
- トレンド初動に入りやすい
- EMAよりクロスが早い
- ただしダマシは増える
短期トレード寄りにしたい人や、
EMAに慣れた人がステップアップする形が理想です。
TEMAは「必要な場面だけ使う」
TEMAは、
常用する指標ではありません。
- 強いトレンドが出ている
- 初動を逃したくない
- 明確な売買ルールがある
こうした限定された場面でこそ真価を発揮します。
「速ければいい」
ではなく、
「速さが必要な場面だけ使う」
これがTEMAの使い分けです。
迷ったらこの考え方でOK
もし選べなくなったら、
この順番を思い出してください。
👉 安定を取る → EMA
👉 速さを少し足す → DEMA
👉 最速が必要 → TEMA
無理に全部使う必要はありません。
3つを同時に使う必要はない
よくある勘違いですが、
「全部表示した方が正確?」
というわけではありません。
線が増えるほど、
判断はむしろブレやすくなります。
自分のトレードに合う1本を決める。
これが、長く勝ち続けるためのコツです。
まとめ:違いが分かれば、もう迷わない
EMA・DEMA・TEMAは、
- 優劣ではなく
- 役割の違い
それぞれに「適した場所」があります。
まずはEMA。
慣れたらDEMA。
必要な場面だけTEMA。
この順番を守れば、
移動平均で迷子になることはありません。
⑥ 初心者はどれを使うべき?おすすめ設定
ここまで読んで、
「理屈は分かった。でも結局どれを使えばいい?」
そう思った初心者の方へ。
結論はとてもシンプルです。
初心者は「EMA一択」でOK
最初に使うなら、
EMAだけで十分です。
理由は3つ。
- ダマシが比較的少ない
- トレンドの方向が分かりやすい
- 長く使える“基準”になる
実際、
経験を積んだトレーダーほどEMAしか使わないケースも多いです。
なぜなら、
遅い=ダメ
ではなく
遅い=無駄な売買を減らせる
からです。
「クロスを待たない」という考え方もある
よくある教科書的な説明では、
- ゴールデンクロスで買い
- デッドクロスで売り
と書かれています。
でも実際の相場では、
クロスを待つと遅い場面も多い。
そこで意識したいのが、
- EMAが上向き(下向き)に転じたか?
- 株価がEMAの上(下)で推移しているか?
つまり、
クロス前に“流れ”で入るという考え方です。
これは初心者でも意識できる、
一段レベルの高い使い方です。
まずはこの設定から始めよう
迷ったら、以下でOKです。
おすすめEMA設定
- EMA:20日 または 25日
- 時間足:日足(最初はこれ一択)
理由は、
- ノイズが少ない
- トレンドが見えやすい
- 検証情報が多い
という、初心者向けの王道だから。
DEMA・TEMAは「慣れてから」でいい
正直なところ、
- まだ勝てていない
- エントリーが安定しない
この段階で
DEMAやTEMAに手を出す必要はありません。
反応が速い指標ほど、
- 判断が増える
- ミスも増える
という落とし穴があります。
初心者がやりがちなNGパターン
❌ EMA・DEMA・TEMAを全部表示
❌ 設定を頻繁に変える
❌ 「もっと速い指標」を探し続ける
これは遠回りコースです。
まとめ:まずはEMAで「相場を見る目」を作る
初心者が最初にやるべきことは、
完璧なエントリーを探すこと
ではなく
トレンドを正しく認識すること
そのための道具として、
EMAは最適です。
- ダマシが少ない
- 判断がシンプル
- 上達しても使い続けられる
EMAで勝てないうちは、他を足さない。
これが結果的に、一番の近道です。
👉 MACDの基本的な見方を復習したい方は
【初心者向け】MACDの使い方・見方を完全ガイド へ
⑦ MACDと移動平均はどう組み合わせる?
MACDも移動平均も、
どちらもトレンドを見るための指標です。
役割は似ていますが、
一緒に使うことで“判断の迷い”が減るのが最大のメリットです。
役割分担をはっきりさせる
まず考え方を整理しましょう。
- 移動平均(EMA)
→ 相場の「方向」と「流れ」を見る - MACD
→ その流れの中で「入るタイミング」を見る
この役割分担ができると、
シグナルに振り回されなくなります。
基本の組み合わせ(初心者向け)
もっともシンプルで実用的なのが、この形です。
① EMAで環境認識
- 株価がEMAの上 → 上昇トレンド
- 株価がEMAの下 → 下降トレンド
② MACDでタイミングを測る
- 上昇トレンド中 → ゴールデンクロスを待つ
- 下降トレンド中 → デッドクロスを待つ
👉
トレンドと逆方向のMACDシグナルは無視
これだけで、
無駄なエントリーはかなり減ります。
ワンランク上の使い方(クロス待ちすぎない)
実際の相場では、
MACDのクロスを待つと遅い場面もあります。
そこで使えるのが、
- EMAが上向き(下向き)に転じた
- MACDがゼロライン付近で切り返している
この状態。
「クロス確定」ではなく、
“転びそうかどうか”を見る感覚です。
クロスを“確認”ではなく
“後押し材料”として使うイメージですね。
よくあるNGな組み合わせ方
初心者がやりがちな失敗も整理しておきます。
❌ EMAが下向きなのにMACDのゴールデンクロスで買う
❌ MACDだけを見て移動平均を無視する
❌ EMA・DEMA・TEMA・MACDを全部表示する
情報を増やすほど、
判断は遅くなります。
シンプルなテンプレート(保存版)
迷ったら、この形に戻ってください。
- チャート:日足
- 移動平均:EMA20(または25)
- オシレーター:MACD(標準設定)
見るポイントは3つだけ。
1️⃣ EMAの向き
2️⃣ 株価がEMAの上か下か
3️⃣ MACDが流れに合っているか
まとめ:MACDは「補助」、主役は流れ
MACDは便利な指標ですが、
主役ではありません。
主役は常に、
相場の流れ(トレンド)
その流れをEMAで確認し、
MACDでタイミングを整える。
この順番を守るだけで、
テクニカル分析は一気に“実戦向き”になります。


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