
株主優待が届くたびに、
「まあ、悪くないか」と思っていた。
箱を開けて、商品を見て、
その日はちょっと得した気分になる。
でも、口座を開くと含み損はじわじわ増えている。
それでもこう思っていた。
「優待があるから、損してない」
「長期で持てば、そのうち戻る」
「この優待は気に入ってるし」
今振り返ると、
これは投資判断でも長期投資でもなく、
ただの“現実逃避”だった。
株主優待そのものが悪いわけじゃない。
本当に欲しい優待を、納得して持ち続けるのは立派な戦略だ。
問題だったのは、
優待が“考えなくていい理由”に変わっていたこと。
含み損を直視しない。
業績も見ない。
「なぜこの株を持っているのか」を、言葉にしない。
この記事では、
初心者の頃に僕がハマっていた
「株主優待があるから損してない」という勘違いを、
実体験ベースで整理していく。
もしあなたが、
優待が届くたびに少し安心して、
株価を見る回数が減っているなら——
それは、危険なサインかもしれない。
株主優待投資は初心者に人気だが、
「含み損でも安心してしまう落とし穴」がある。
① 株主優待があると「損してない気」になる理由
株主優待があると、
含み損が出ていても、なぜか心が落ち着く。
株価は下がっているのに、
「でも優待があるしな」と思えてしまう。
この感覚、初心者の頃はかなり強烈だった。
理由はシンプルで、
株主優待は“現金っぽい満足感”をくれるからだ。
商品が届く。
食事券が使える。
家族に「これ株の優待なんだ」と言える。
すると、頭の中でこんな変換が起きる。
含み損 = まだ確定していない
優待 = すでに得した
本当は全く別物なのに、
脳内では自然に相殺されてしまう。
たとえば、
株価で3万円の含み損が出ていても、
毎年3,000円分の優待が届くと、こう考える。
「10年持てば元は取れる」
「実質、そんなに損してない」
でもこれは、
投資判断ではなく“気分の帳尻合わせ”だ。
株価の下落理由は見ない。
業績の変化も確認しない。
「この株を今も持つ理由」を考えなくなる。
株主優待は、
本来なら“おまけ”でしかないはずなのに、
いつの間にか主役の座にすり替わってしまう。
さらに厄介なのは、
優待は「届く」という行為そのものが、
判断の先延ばしを正当化してくれることだ。
届いた瞬間だけ、
「大丈夫」「間違ってなかった」と思える。
でもそれは、
問題を解決したわけじゃない。
含み損は減っていない。
株価のトレンドも変わっていない。
ただ、目を逸らしただけだ。
この状態が続くと、
次に待っているのは決まっている。
- 優待が改悪・廃止されて初めて焦る
- 株価が戻らず、塩漬け期間が伸びる
- 「損してないはずだったのに…」と気づく
株主優待があることで、
損をしていない“つもり”になっていただけ。
それが、この勘違いの正体だった。
② 「優待目的だからOK」が危険に変わる瞬間
株主優待を目的に株を買うこと自体は、
決して間違いじゃない。
「この優待が欲しい」
「長く使う予定がある」
そうやって納得して買うのは、立派な動機だ。
問題は、
“いつからか目的がすり替わる瞬間”にある。
最初はこうだったはずだ。
- 業績も確認した
- 株価水準も一応見た
- 優待は「おまけ」だった
それが、株価が下がり始めると変わる。
「下がったけど、優待はある」
「優待が続くなら問題ない」
「売る理由はない」
ここで、
判断基準が株価や企業から、優待だけになる。
この瞬間から、
優待目的の投資は“危険側”に足を踏み入れる。
なぜなら、
株価が下がる理由と、
優待が続くかどうかは、まったく別だからだ。
業績が悪化しても、
コストを削るために優待は続くことがある。
逆に、黒字でも優待が突然廃止されることもある。
それなのに、
優待が届いている間は、こう思ってしまう。
「まだ大丈夫」
「何も起きていない」
でも実際は、
水面下では状況が悪化していることも多い。
さらに厄介なのは、
優待目的の投資は、
「出口」を考えなくなる点だ。
値上がり益は期待していない。
損切りラインも決めていない。
あるのは、
「優待が続く限り持つ」という曖昧な基準だけ。
これでは、
株価が半分になっても動けない。
売る理由がないのではなく、
売る判断軸を持っていないだけだ。
そして、
優待が改悪・廃止された瞬間に、
すべてが一気に崩れる。
- 優待がなくなった
- 株価も下がったまま
- 逃げ場がない
このとき初めて、
「損してないつもりだった」現実に気づく。
優待目的の投資が危険になるのは、
優待を理由に
考えることをやめたときだ。
③ 初心者が陥る2つのフェーズ
「株主優待があるから損してない」
この勘違いは、ある日突然生まれるわけじゃない。
ほとんどの場合、
2つのフェーズを順番に通過する。
フェーズ①:気にしないフェーズ(都合のいい無関心)
最初は、そこまで深刻じゃない。
株価が少し下がる。
含み損が出る。
でも、優待が届く。
すると、こう思う。
「まあ、長期だし」
「この優待、好きだし」
「今は気にしなくていい」
この段階では、
まだ“余裕があるつもり”だ。
口座を見る回数は減る。
業績チェックもしなくなる。
でも本人はこう思っている。
「落ち着いてるだけ」
「ブレてないだけ」
実際は、
見ないことで平静を保っているだけなのに。
フェーズ②:正当化フェーズ(引き返せなくなる)
問題は、
株価が戻らないまま時間が経ったとき。
含み損は固定化し、
「戻る前提」で考え始める。
ここで登場するのが、
優待という最強の言い訳だ。
- 優待があるから問題ない
- 配当も出てる
- 実生活で使えてる
こうして、
損している現実を“価値”に置き換える。
でも、このフェーズに入ると、
もう一つの変化が起きる。
「売らない理由」だけは増えるのに、
「持ち続ける理由」は言語化できない。
なぜ持っているのか聞かれると、
答えはいつも同じになる。
「優待があるから」
「昔から持ってるから」
これが、
引き返せなくなったサインだ。
この2つのフェーズを通ると、
投資はいつの間にか
「判断」ではなく「習慣」になる。
買った理由は思い出せない。
でも、売る理由もない。
気づいたときには、
優待が届くたびに安心し、
株価を見るのが怖くなっている。
④ 僕が一番まずかったと思っている点
今振り返って、
一番まずかったと思っているのは、
株主優待を目的にしたことでも、
長期保有を選んだことでもない。
優待が欲しい。
長く持つつもり。
ここまでは、何も問題なかった。
本当にダメだったのは、
「株価を気にしない」という言葉を、
考えないための免罪符にしていたことだ。
「長期だから株価は見ない」
「短期の値動きは意味がない」
一見すると、
落ち着いた投資家っぽい。
でも実際は、
都合の悪い数字から目を逸らしていただけだった。
株価が下がった理由を考えない。
業績の変化も追わない。
「今もこの株を持つ理由」を更新しない。
それでも、
優待は届く。
だから、
「間違ってなかった」と思える。
これは、
投資スタンスでも信念でもなく、
思考停止を正当化する仕組みだった。
本来、
「株価を気にしない」というのは、
考えたうえで気にしないという意味のはずだ。
業績を見て、
リスクも理解して、
それでも持つと決める。
それが、
長期投資のはずだった。
でも当時の僕は、
考えることを放棄していた。
株主優待は、
その放棄を隠してくれる存在だった。
だから言える。
問題は優待じゃない。
問題は、優待を理由に考えなくなった自分だった。
⑤ じゃあ、どう考えればよかったのか(結論)
投資である以上、
出口戦略がない状態は成立しない。
これは短期でも長期でも同じだ。
売るタイミングを完璧に決める必要はない。
細かいルールもいらない。
でも、考え方の軸は必要だった。
当時の僕に足りなかったのは、
「いつ売るか」ではなく、
「なぜ持ち続けるのか」を言葉にすることだった。
含み益が出ても、含み損が出ても、
一度立ち止まって考える。
- なぜこの株を買ったのか
- 今もその理由は生きているか
- 優待がなくなっても持つか
これだけでいい。
売らないと決めるなら、
「なぜ売らないのか」を言語化する。
それができていれば、
株価を気にしないのも、長期保有も、
ちゃんと“戦略”になる。
逆に言えば、
優待があるから、
なんとなく持ち続けている状態は、
出口戦略がゼロの投資だ。
優待投資がダメなんじゃない。
長期保有が悪いわけでもない。
問題は、
判断を後回しにしたまま、時間だけが過ぎていくことだった。
投資は、
「考え続けること」そのものがリスク管理だ。
ルールがなくてもいい。
テクニックがなくてもいい。
でも、
考えるのをやめないこと。
それが、
この失敗から学んだ、
いちばん大きな結論だった。
⑥ まとめ|「優待がある=損してない」ではなかった
初心者の頃、
株主優待が届くたびに安心していた。
含み損があっても、
「まあ大丈夫」と思えた。
でもそれは、
損していないのではなく、考えるのをやめていただけだった。
今回の勘違いは、これ。
- ✅優待があるから損してない
- ✅長期だから株価は見なくていい
- ✅売らなければ負けじゃない
どれも一見、正しそうに聞こえる。
でも、出口戦略がない投資は成立しない。
優待投資が悪いわけじゃない。
長期保有が間違いなわけでもない。
問題は、
「なぜ持っているのか」を言語化しないまま、
時間だけが過ぎていくことだった。
含み益でも、含み損でも、
一度立ち止まって考える。
売らないなら、
「なぜ売らないのか」を自分で説明できるか。
それだけで、
投資は“作業”から“判断”に変わる。
▶ 初心者の頃に勘違いしていたことシリーズ
- 第1回:なぜ損切りは「負け」に見えるのか?
- 第2回:株は毎日売買しないと「サボり」だと思ってた話
- 第3回:「下がったら買い増し(ナンピン)」という名の現実逃避
- 第4回:含み益が出た瞬間、考えるのをやめていた話
- 第5回:株主優待が届くたびに、現実から目を背けていた話
- 第6回:雑誌の「爆上げ推奨株」を信じて、自分の頭を捨てた末路(公開予定)


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